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更新日 2022.2.26

義務教育学校とは?そのメリット・教育制度の中身を徹底解説!

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「義務教育学校」という学校をご存知でしょうか。

2016年に文部科学省主導で新設された学校教育制度で生まれた学校で、現在でも徐々にその数を増やしてきています。

その義務教育学校とは一体どのようなものなのか、前期課程や後期課程などの教育の中身や、通常の学校と比較してのメリット・デメリットについて見ていきたいと思います。

義務教育学校とは?

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義務教育学校制度化の背景・目的

義務教育学校とは、2016年に新設された学校教育制度で、小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う学校のことです。

文部科学省において検討され実現しました。

元々日本では、小学校6年間、中学校3年間という学校制度が整っていました。

この制度は「中1ギャップ」という、中学校へ進級した際に起こる勉強や環境面などの変化による心理的問題を抱えています。

また、少子化に伴う学校の統廃合が進んでおり、学校をどのくらい維持していけるのかという問題も起こってきています。

このような事態に対処していくため、2000年代から自治体レベルの取り組みとして小中一貫の教育制度が登場し、その後に国でも制度化されたという流れです。

義務教育学校の教育内容

義務教育学校の修業年限は9年間となり、学年の呼び方も1年生から9年生となります。

つまり、これまでの中学1年生は7年生になるということです。

教育内容は1~6年生の前期課程と、7~9年生の後期課程に分かれます。

前期課程は小学校学習指導要領に沿った教育、後期課程は中学校学習指導要領に沿った教育を受けることになります。

このため、教育の内容自体に他の学校との差があるわけではありません。

ただし後述するように、学校によってはカリキュラムの組み方に差が出てくる場合があります。

✔2016年に新設された学校教育制度

✔修業年限は9年間

✔前期課程(1~6年生)と後期課程(7~9年生)

小中一貫校・義務教育学校の違いは?

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小中一貫校とは?

小中一貫校は、既にある小学校と中学校を組み合わせて一貫教育を行う学校のことです。

とはいえ、学校制度としては小学校6年間、中学校3年間という形が守られています。

小中一貫校と義務教育学校を比較

  小中一貫校 義務教育学校
教育課程 小学校6年間 中学校3年間 前期課程6年間と後期課程3年間
合計9年間
教員体制等 ・それぞれの学校に校長と教職員組織あり。
・小学部は小学校の教員免許、中学部は中学校の教員免許を保有する教職員が授業を行う。
・9学年の校務を1人の校長が所掌する。
・教職員は原則として小学校、中学校両方の免許を持つ者に限られる。
ただし当面の間、どちらか一方の免許しか持たない場合は、前期課程又は後期課程それぞれの教諭等として活動ができる。
標準規模 それぞれ12学級以上18学級以下 18学級以上27学級以下
通学距離 小学校はおおむね4km以内
中学校はおおむね6km以内
おおむね6km以内
設置手続き 市町村教育委員会の規則等 市町村の条例

小中一貫校の施設形態としては、「施設一体型」、「施設隣接型」、「施設分離型」が挙げられます。

施設隣接型と施設分離型は、教育課程等は一貫しますが、小学校と中学校の施設自体は別となります。

施設一体型は同一の校舎内に全9学年が存在することになり、外見上は義務教育学校との違いがわかりづらいです。

義務教育学校は教育課程などにおいて小中一貫校との差異が認められるものの、共通する点も多くあります。

✔小中一貫校は小学校と中学校の組み合わせ

✔施設形態が様々に存在

✔義務教育学校と小中一貫校は共通点も多い

義務教育学校のメリット・デメリット

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メリット

「中1ギャップ」の解消

中学校へ進級することによる環境面などの変化が発生しないため、上記でも触れた「中1ギャップ」を解消できます。

「中1ギャップ」の問題となっていた、学習に躓いてしまう、いじめが起きる、不登校になってしまう、学校に馴染めなくなった、などの事象を防ぐことに繋がります。

一貫したカリキュラムによるスムーズな学習

前期課程と後期課程合わせて9年間でカリキュラムが一貫しているため、この期間中は生徒が迷うことなく学習に取り組むことができます。

ちなみに義務教育学校の学年の区切りは、従来の「6・3制」ではなく、例えばバランスの良い「5・4制」や、細切れな「4・3・2制」に設定することも可能になっています。

後者の場合は、前期・中期・後期制となります。

9年間を通してカリキュラムを組んでいくため、このような自由も認められるというわけです。

教育内容の実施学年を入れ替えたり、中学校で学ぶ内容を小学校段階で先取りしたりすることもカリキュラム次第で可能です。

教職員は小学校・中学校両方の教員免許を保有しているので、小学生の内から専門の先生が教えることで理解が進みやすくなるということも期待されます。

学年が進むにつれて学習内容が難しいと感じるようになっても、同じ教職員からの指導を受けることが可能です。

異学年間での交流促進

9学年の生徒が同じ校舎で過ごすことになるため、異なる学年同士の交流機会が多く生まれます

こうした関わりから、上級生の責任感や自己肯定感、下級生の目標の明確化などの効果が発生すると考えられます。

デメリット・課題

人間関係の固定化

9年間同じ環境に身を置くことになるので変化のない安心感がある一方、一度人間関係が崩れてしまうと逃げ場がなくなってしまうという恐れもあります。

また、高校への進学時になって初めて新しい人間関係を築くということになった時、他の学校に通う生徒よりもストレスを抱え込みやすくなる可能性があります。

教職員の免許問題

上記でも挙げたように、当面の間は小学校と中学校どちらかの免許のみでもそれぞれの課程での指導はできますが、いつまでもというわけではありません。

両方の免許取得者をスムーズに確保できるのかという問題があります。

また、免許があるから指導も上手く出来るというような簡単な話ではないため、研修制度などを充実させることも課題として挙げられます。

他の学校との格差

これまでの小学校や中学校も当然併存しているため、地域によって学制が異なることに対する混乱や、学校間での格差、学力の格差などが生まれる可能性が指摘されています。

転校などで義務教育学校から他の学校へ移動する生徒、あるいは他の学校から義務教育学校へ移動する生徒への学制の差に対するフォローアップ体制なども課題として残っています。

✔一貫したカリキュラムによる学習環境が魅力

✔カリキュラムは学校によって様々に設定可能

✔他学校との格差などが今後の課題に

義務教育学校の実施状況

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令和2年時点でのおもな公立の義務教育学校

都道府県 学校名
北海道 斜里町立知床ウトロ学校
岩手県 大槌町立大槌学園
宮城県 名取市立閖上小中学校
秋田県 井川町立井川義務教育学校
山形県 新庄市立萩野学園
福島県 飯舘村立いいたて希望の里学園
茨城県 つくば市立春日学園義務教育学校
栃木県 小山市立絹義務教育学校
埼玉県 春日部市立江戸川小中学校
東京都 品川区立品川学園
神奈川県 横浜市立義務教育学校西金沢学園
富山県 高岡市立国吉義務教育学校
石川県 珠洲市立宝立小中学校
長野県 信濃町立信濃小中学校
岐阜県 白川村立白川郷学園
静岡県 伊豆市立土肥小中一貫校
愛知県 飛島村立飛島学園
三重県 津市立みさとの丘学園
滋賀県 長浜市立余呉小中学校
京都府 亀岡市立亀岡川東学園
大阪府 守口市立さつき学園
兵庫県 神戸市立義務教育学校港島学園
奈良県 天川村立天川小中学校
和歌山県 和歌山市立伏虎義務教育学校
鳥取県 鳥取市立湖南学園
島根県 松江市立義務教育学校八束学園
広島県 府中市立府中学園
佐賀県 伊万里市立南波多郷学館
長崎県 佐世保市立浅子小中学校
熊本県 高森町立高森東学園義務教育学校
大分県 大分市立碩田学園
鹿児島県 薩摩川内市立東郷学園義務教育学校

文部科学省による平成29年3月1日時点での調査では、義務教育学校は全国で48校でした。

その後は統計調査結果がないので正確な数字は不明ですが、全国でその数は増えていているようです。

✔平成29年時点での学校数は48校

✔その数は年々増加しており、全国各地に設置されている

✔義務教育学校という名称ではない学校も存在

義務教育学校についてのまとめ

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義務教育学校は始まったばかりの制度に基づいて設立されたものであるため、学校のあり方についての課題はまだ残されています。

しかしながら、メリットも多く存在しており、また各都道府県での設置数も増えてきていますので、進学先の候補の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。

【初心者でもわかる】この記事のまとめ

「義務教育学校」に関してよくある質問を集めました。

義務教育学校とは?

義務教育学校とは2016年に文部科学省主導で新設された学校教育制度で、小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う学校のことです。

小中一貫校・義務教育学校の違いは?

記事では、小中一貫校と義務教育学校の特徴を比較しながら義務教育学校の特徴を浮き彫りにしています。詳細はこちらをご覧ください。

義務教育学校のメリット・デメリットは?

記事では義務教育学校のメリット・デメリットをいくつか挙げています。詳細はこちらをご覧ください。

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-StudySearch編集部-
この記事は、StudySearchを運営している株式会社デジタルトレンズのStudySearch編集部が企画・執筆した記事です。
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