【高校数学】空間ベクトルとは?空間ベクトルの表し方や典型的な問題を解説
ベクトルの最後の単元である空間ベクトル。
ベクトルが苦手な方は、最後の単元と聞くと「難しくて全く理解できないかも……」と不安になるかもしれません。
しかし、空間ベクトルでは応用的な内容はあまり出てきません。
むしろ、今まで学習してきた平面ベクトルが理解できていれば空間ベクトルもマスターできます。
とはいえ、今まで学習してきた平面ベクトルにも不安がある方は多いでしょう。
そこで、今回は平面ベクトルのおさらいから学習を始めます。
例題を使いながら、具体的に分かりやすく以下について解説するので、ぜひ最後まで目を通していただき、空間ベクトルの理解を深めましょう。
✔空間ベクトルの成分表示
✔分解
✔大きさ
✔内積
✔平行条件と垂直条件
✔空間における内分点/外分点/重心の位置ベクトル
✔4点が同一平面上
平面ベクトルをおさらいしよう
まず、空間ベクトルを学習する上で理解しておくべき平面ベクトルのおさらいをします。
⇓平面ベクトルが完璧な方はこちら⇓
ここでは、以下の4点について解説します。
平面ベクトルの足し算
まずは、ベクトルの足し算の解説をします。
-
ベクトルの足し算は、それぞれのベクトルの終点と始点を繋げて、一筆書きの状態にします。
その状態で、全体の始点と全体の終点を一直線で引いた矢印が答えのベクトルとなります。
例えば、「ABベクトル」と「BCベクトル」の足し算は、最終的にはAからCにいくことになるため、AからCに向かって引いた矢印(ベクトル)が足し算の答えです。
ベクトルの内積
次に、ベクトルの内積を解説します。
ベクトルの内積の公式は以下の通りです。
「aベクトル」・「bベクトル」=|aベクトル||bベクトル|cosθ(θは「aベクトル」と「bベクトル」との間の角度の小さい方)
これを「aベクトル」と「bベクトル」の内積と呼びます。
ここで、ベクトルの垂直について解説します。
「aベクトル」と「bベクトル」が垂直に交わっているとき、間の角度(なす角)は90°です。
cosθ=cos90°=0のため、「aベクトル」と「bベクトル」が垂直に交わるときの内積は0になります。
問題演習において、2つのベクトルが垂直であることが条件の場合、内積が0であることを利用する問題である可能性が高いので、必ず覚えておきましょう。
ベクトルの内分点
続いて、ベクトルの内分点について解説します。
従来、線分ABをm:nに内分する点Pは、
P(nx1+mx2/m+n, ny1+my2/m+n)と表します。
これを位置ベクトルを使って表すと、
点A(aベクトル)、点B(bベクトル)を結ぶ線分ABをm:nに内分する点Pは、
「pベクトル」=(n「aベクトル」+m「bベクトル」)/(m+n)
と表せます。
なお、位置ベクトルは、原点Oを始点とし、終点の位置を表すベクトルです。
例えば、点Aについて
Oを始点、Aを終点としたベクトルを「aベクトル」とすると、点A(aベクトル)と表すことが可能になるのです。
これを位置ベクトルといいます。
平面ベクトルのベクトル方程式(直線)
最後に、直線のベクトル方程式の計算方法を解説します。
まず、点Aを通って「dベクトル」に平行な直線を考えましょう。
直線上の任意の点をPとして、点Pの位置ベクトルを「pベクトル」とします。
「pベクトル」は「OPベクトル」のことですが、考え方を変えると「OAベクトル」+「APベクトル」とも表せます。
ここで、「APベクトル」は「dベクトル」に平行であることから、「dベクトル」を実数倍したものが「APベクトル」であると考えられます。
実数をtとおくと、「APベクトル」=t「dベクトル」と表せます。
したがって、「pベクトル」=「aベクトル」+t「dベクトル」が答えです。
CHECK
- ベクトルの足し算は、全体の始点と全体の終点を一直線で引いた矢印
- 2つのベクトルが垂直に交わると内積が0になる
- 線分ABをm:nに内分する点Pは、「pベクトル」=n「aベクトル」+m「bベクトル」/m+n
空間ベクトルとは?|例題を使って理解しよう
ここからは、空間ベクトルを解説します。
空間ベクトルとは、今まで学習してきた平面ベクトルを三次元に拡張して考えるものです。
平面ベクトルが理解できていれば、空間ベクトルも簡単に理解できるため、あまり焦らず1つずつ解説を理解していきましょう。
空間ベクトルの基本の考え方|x軸・y軸・z軸
平面ベクトルでは、縦と横を表すx軸・y軸を使用していました。
しかし、2つの軸だけでは三次元の空間を表せません。
そこで、空間ベクトルでは、高さを表すz軸も使用します。
x軸・y軸・z軸の3つが揃うことで空間ベクトルを表せるようになるのです。
空間ベクトルの表し方
-
空間ベクトルは三次元ですが、紙の上で表す際は二次元なので、便宜的に三次元に見えるような形でグラフを書きます。
このグラフをxyz空間と呼びますが、まずはxyz空間で点を表せるようになることが大切です。
例えば、(1,2,3)という点を考えてみましょう。
まずは、xy平面の中に(1,2,0)という点を書き込みます。
この時、xy平面上なので、z座標は0です。
なお、(1,2,0)はx=1を通ってy軸に平行な線と、y=2を通ってx軸に平行な線との交点に位置します。
(1,2,0)の点を書き込んだら、原点から直線を引っ張り、斜めの線も書き込んでください。
この斜めの線に平行で、z=3を通る直線と、(1,2,0)からz軸方向に伸ばした直線の交点が(1,2,3)の点になります。
ここまでの流れを理解しておくことが、空間ベクトルを学習するうえでのキーポイントになります。
また、原点から(1,2,3)へと引いた矢印がベクトルとなります。
成分は矢印の終点の座標と一致しているため、平面ベクトルと考え方は同じです。
CHECK
- 空間ベクトルとは平面ベクトルを三次元に拡張して考えるもの
- 空間ベクトルをグラフに書く際は便宜的に三次元に見えるような形で書く
- ベクトルの成分は平面ベクトルと同じ考え方
空間ベクトルの公式
次に空間ベクトルの公式をおさらいします。
空間ベクトルの成分表示
A(a1, a2, a3), B(b1, b2, b3)
ABベクトル=(b1-a1, b2-a2, b3-a3)
座標空間において、点A(a1, a2, a3)、点B(b1, b2, b3)をとると、ABベクトルは上記のように表されます。
ちなみに座標のa1をx成分、a2をy成分、a3をz成分といいます。
空間ベクトルの分解
pベクトル=saベクトル+tbベクトル+ucベクトル
同じ平面上にない4点O, A, B, Cに対して、OAベクトル=aベクトル, OBベクトル=bベクトル, OCベクトル=cベクトルとすると、空間内のどんなpベクトルも、実数s, t, uを用いて
pベクトル=saベクトル+tbベクトル+ucベクトル
と表すことができます。
空間ベクトルの大きさ
・aベクトルの大きさ
aベクトル=(a1 , a2, a3)の時、
|aベクトル|=√a1²+a2²+a3²
・2点を結ぶベクトルの大きさ
A(a1, a2, a3), B(b1, b2, b3)のとき、
ABベクトル=OBベクトル-OAベクトル=(b1-a1, b2-a2, b3-a3)より、
|AB|ベクトル=√(b1-a1)²+(b2-a2)²+(b3-a3)²
空間ベクトルの大きさはx, y, z成分をそれぞれ2乗したものにルートをつけます。
空間ベクトルの内積
0ベクトルでない2つの空間ベクトルaベクトル=(a1, a2, a3), bベクトル=(b1, b2, b3)がなす角をθ(0°≦θ°≦180°)とすると、
aベクトル・bベクトル=|aベクトル||bベクトル|cosθ
aベクトル・bベクトル=a1b1+a1b2+a3b3
空間ベクトルの内積は上記で求めることができます。
空間ベクトルの平行条件と垂直条件
0ベクトルでない2つの空間ベクトルaベクトル=(a1, a2, a3), bベクトル=(b1, b2, b3)において
aベクトル//bベクトル↔aベクトル=kbベクトルとなる実数kがある
↔a1b2-a2b1=0
↔a2b3-a3b2=0(成分表示)
↔a3b1-a1b3=0
aベクトル⊥bベクトル↔aベクトル・bベクトル=0
↔a1b1+a2b2+a3b3=0(成分表示)
aベクトル, bベクトルが垂直の場合、内積は0になります。
空間における内分点・外分点・重心の位置ベクトル
線分ABをm:nに内分する点Pの位置ベクトルpベクトル
線分ABをm:nに外分する点Qの位置ベクトルQベクトル
点Oに関して空間内の3点A(OAベクトル=aベクトル), B(OBベクトル=bベクトル), C(OCベクトル=cベクトル)をとるとき、△ABCの重心Gの位置ベクトルgベクトルはaベクトル, bベクトル, cベクトルを用いて
gベクトル=aベクトル+bベクトル+cベクトル/3
また、3点A(a1, a2, a3), B(b1, b2, b3), C(c1, c2, c3)を結んでできる空間内の三角形の重心Gの座標は、
G(a1+b1+c1/3, b1+b2+b3/3, c1+c2+c3/3)
空間における内分点・外分点・重心の位置ベクトルはそれぞれ上記の公式で求めることができます。
内分点と外分点は、公式が似ている分覚えやすいと感じる人もいるかもしれませんが、間違えやすいポイントでもあるので符号には注意が必要です。
4点が同一平面上
点Oに関して空間内のベクトルをOAベクトル=aベクトル, OBベクトル=bベクトル, OPベクトル=pベクトルとする
4点O, A, B, Cが同一平面上↔pベクトル=aベクトル+bベクトル
4点O, A, B, cが同一平面上にあるとき、上記の公式が成り立ちます。
✔空間ベクトルをマスターするにはまずは公式を覚える
✔問題によってどの公式を使うべきか見極めることが重要
空間ベクトルの典型的な問題演習
ここからは、空間ベクトルの典型的な問題演習を解説します。
基本的な考え方は平面ベクトルと変わりません。
以下の4つのトピックを順番に解説するので、焦らずゆっくりと理解しましょう。
空間ベクトルの足し算・引き算
まずは、空間ベクトルの足し算・引き算のやり方を解説します。
基本的な考え方は、平面ベクトルと同じです。
直方体ABCD-EFGHを考えてみましょう。
直方体ABCD-EFGHにおいて、「ABベクトル」を「aベクトル」、「ADベクトル」を「bベクトル」、「AEベクトル」を「cベクトル」とします。
このとき、「FHベクトル」はどのように表されるのでしょうか?
「FHベクトル」=「FGベクトル」+「GHベクトル」と表されます。
ベクトルは平行移動させても同じベクトルである、というルールを使うと、「FGベクトル」=「ADベクトル」、「GHベクトル」=「BAベクトル」となります。
ここで、「BAベクトル」=-「ABベクトル」であることから、「FHベクトル」=「ADベクトル」-「ABベクトル」=「bベクトル」-「aベクトル」と表されます。
以上のように、平面ベクトルで学習したことを活用すれば空間ベクトルの足し算も理解できることがわかるでしょう。
空間ベクトルの内積|角度を求める
続いて、空間ベクトルの角度を求める以下の例題の解説をします。
問題)「aベクトル」=(1,-1,2)、「bベクトル」=(-1,-2,1)のなす角θ(0°≦θ≦180°)を求めよ。
平面ベクトルで角度を求める場合には、2つのベクトルの内積を計算したはずです。
空間ベクトルにおいても考え方は同じで、2つのベクトルの内積を求めます。
内積には2通りの書き方があります。
- ベクトルの大きさとなす角の余弦を使った式
- 正弦を使った掛け算
実際に数字を当てはめると、cosθ=½と求められ、θ=60°であることがわかります。
これも平面ベクトルのときと同じ考え方で求められることがお分かりいただけたはずです。
空間ベクトルの内分点の公式
続いて、空間ベクトルの内分点の公式を見ていきましょう。
空間ベクトルの内分点の公式は、平面ベクトルの内分点の公式と全く同じになります。
内分点の公式に空間ベクトルの成分を代入すれば、内分点の座標を求めることが可能です。
以下の例題を解いてみましょう。
問題)3点A(2,3,-3)、B(5,-3,3)、C(-1,0,6)に対して、線分AB,BC,CAを2:1に内分する点をそれぞれP,Q,Rとする。
このとき点Pの座標を求めよ。
点Pは線分ABを2:1に内分した点であることから、内分点の公式を用いて、以下のような計算が可能です。
「OPベクトル」=(「OAベクトル」+2「OBベクトル」)/(2+1)=(4,-1,1)
これも平面ベクトルと同じであることがわかりますね。
以上の3つは、平面ベクトルと空間ベクトルの考え方が同じです。
空間ベクトルのベクトル方程式
これまでは、平面ベクトルと空間ベクトルとで考え方が同じことを示してきました。
しかし、ここから解説する空間ベクトルのベクトル方程式では平面ベクトルと考え方が異なります。
-
そもそもベクトル方程式とは、図形を位置ベクトルを使って表すことです。
平面ベクトルと空間ベクトルでは、表せる図形に差があります。
平面ベクトルでは考えうる平面が1つしかありませんが、空間ベクトルでは空間の中にいくつもの平面を考えられます。
ここでは、2パターンの問題を通して、空間ベクトルのベクトル方程式を解説します。
ベクトル方程式の問題演習①
では、以下の問題を見てください。
問題)空間内に3点A(「aベクトル」),B(「bベクトル」),C(「cベクトル」)がある。
次の図形を表すベクトル方程式を求めよ。
この問題は直線のベクトル方程式を求める問題で、基本的な考え方は平面ベクトルのときと変わりません。
まず、原点から「通る点」(今回でいえば点A)へのベクトルを考えます。
そこに、点Aから点Pまでのベクトル(「APベクトル」)を足せば良いのです。
ここで、「APベクトル」はBCに平行なので、「BCベクトル」の実数倍であることが考えられます。
よって、「OPベクトル」は以下のように求められます。
「OPベクトル」=「OAベクトル」+t「BCベクトル」
「pベクトル」=「aベクトル」+t(「cベクトル」-「bベクトル」)
=「aベクトル」-t「bベクトル」+t「cベクトル」
ベクトル方程式の問題演習②
続いて、以下の問題を見てください。
問題)空間内に3点A(「aベクトル」),B(「bベクトル」),C(「cベクトル」)がある。
次の図形を表すベクトル方程式を求めよ。
この問題は平面を表すベクトル方程式の問題です。
問題文に「垂直」と書かれている場合は、内積が0であることを利用します。
この場合では「直線AB上を通るベクトル」と「平面内のベクトル」が垂直であることを表しています。
よって、「CPベクトル」⊥「ABベクトル」となるため、「CPベクトル」・「ABベクトル」=0
すなわち、(「pベクトル」-「cベクトル」)・(「bベクトル」-「aベクトル」)=0
これが求めるベクトル方程式となります。
CHECK
- 基本的な考え方は平面ベクトルと同じ
- 「平面」を表すベクトル方程式のみ新しく学習する考え方
- ベクトル同士が垂直であることから内積0を利用する
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- 数学力向上には論理的思考力が必要
- いつでもLINEで質問可能
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空間ベクトルのおすすめの参考書・勉強法
空間ベクトルのおすすめの勉強法は、平面ベクトルを正確に理解することです。
今回学習したように、ベクトル方程式以外は全て平面ベクトルと同じ考え方で問題が解けます。
そのため、平面ベクトルが理解できていれば空間ベクトルも半分以上理解できていることになるのです。
平面ベクトルをマスターした上で、空間ベクトルのベクトル方程式のみ別途学習すれば、空間ベクトルはマスターできます。
まずは、平面ベクトルの問題を繰り返し解いて、平面ベクトルをマスターしましょう。
問題集の勉強範囲
空間ベクトルのおすすめの問題集の勉強範囲は以下の通りです。
- 青チャート【第2章 空間ベクトル】9 位置ベクトル、ベクトルと図形 10 座標空間の図形
- サクシード【第2章 平面上のベクトル】14 ベクトルと図形 15 座標空間における図形 16 平面・直線の方程式
- 4STEP【第2章 空間のベクトル】5 位置ベクトル 6 ベクトルの内積 7 座標空間における図形/li>
- Legend【第7章 ベクトル】21 平面上の位置ベクトル 22 空間におけるベクトル
これらの問題と併せて、平面ベクトルの問題も繰り返し復習しておきましょう。
前述のとおり、空間ベクトルの大半は平面ベクトルと同じ考え方で問題が解けます。
そのため、平面ベクトルについての理解を深めておくことが空間ベクトルの理解にも役立ちます。
土台を固めることが数学力向上には1番大切なので、基礎をおろそかにせず着実に学習しましょう。
CHECK
- 平面ベクトルと空間ベクトルの考え方はほとんど同じ
- 平面ベクトルの理解を優先させる
- 「平面」を表すベクトル方程式のみ新しく学習する考え方なので重点的に学習
まとめ
今回は、空間ベクトルについて解説しました。
本文で見てきたように、空間ベクトルを理解するには、平面ベクトルを理解しておくことが重要です。
ベクトル方程式以外は、平面ベクトルで学習した考え方をそのまま取り入れれば、問題を解けます。
基本に忠実に学習すれば必ず理解できるようになります。
わからない部分があれば、本記事や平面ベクトルを解説した記事を見直して、理解を深めるようにしましょう。
【初心者でもわかる】この記事のまとめ
「空間ベクトル」に関してよくある質問を集めました。
空間ベクトルで内積を使うと何が求められるの?
空間ベクトルで内積を使うと、交わる2つのベクトルの間の角度が求められます。「ベクトルの大きさとなす角の余弦を使った式」や「正弦を使った掛け算」をもとに計算すると、sinθやcosθが求められるので、対応する角度を求めてください。空間ベクトルでの内積についてはこちらを参考にしてください。
空間ベクトルの問題演習はどんなポイントに注意すれば良い?
空間ベクトルの問題演習ばかりでなく、平面ベクトルの問題演習にも取り組むことが大切です。平面ベクトルと空間ベクトルは大部分で同じ考え方を共有しているため、平面ベクトルの問題演習ができれば空間ベクトルの問題演習もできるようになります。平面ベクトルについてはこちらを参考にしてください。
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